第三回までを終えてどなたからも質問がない。元来、アジア駐在は経験してみないとわからないかのかもしれない。
日本でビジネスをしていると想像も出来ないような交通混雑、顧客訪問するにしても日本のような公共交通機関はない。車でしかも片道4時間をかけての道中、挙げ句にアポイントすら忘れられていることもしばしば。
製品購入の決断にしても、日系工場の場合、日本人駐在員の承認、現地スタッフの理解、日本本社からの予算援助と乗り越えなくてはならない障害も多い。一般的に日本企業は欧米と比較して、決定権の現地移管がされておらず、全てにおいてビジネススピードが遅い。
コロナ禍で日本のIT化の遅れ、生産性の低さが露呈されたと同様に、アジアビジネスでは致命的だ。日本人はバブル崩壊後、失われた数十年に浸かってしまっている。
東南アジアの国々は若くて経験がない。彼らには過去のしがらみがなく、特にITのような新しい技術には、いきなり最新のものを求める。ある意味、前向きともいえるが、生産スケジューラのような業務ソフトウェアに関しては、経験がなく致命的だ。
今年こそ、コロナの売上低迷から、V字回復をと期待した。1Qこそ、コロナで発注が滞っていた製品の発注ラッシュがあったものの、ここへきて、戦争要因とお先真っ暗だ。東南アジア各国は欧米への輸出が主であり、日系企業の主力である自動車はアメリカ向けが中心で直接ロシアとの貿易額は低いとはいえ、予断を許さない。
話を変えよう。上記のようなビジネス環境の中でも、各国の代理店には事業継続をお願いするしかない。それには、ビジネス案件をできるだけ、多く作り出す必要がある。
当方、10年の経験からすれば、宣伝広告やセミナー開催、フェア出展などに比較してコールセンターからの顧客電話がいちばん有効だ。この時期だとオンラインデモを提案することで顧客にも代理店にも負荷がない。たとえアポイントがとれなくても、担当者のe-mailアドレスがとれるので、継続した情報提供につながる。
東南アジアでのネームバリューも大きい。当社のベトナムの代理店の一つは、日本でも有名なコンピューター会社であるが、コールセンターからの顧客リクワイヤーを現地の代理店店として依頼すると、他の無名な代理店と比較しても圧倒的なレスポンスがある。
現地企業の場合、顧客の口コミは無視できない。その意味では、導入成功事例を増やすことが不可欠だが、現時点では上手くいっていない。メーカーとしても、日本市場とは異なるノウハウをためていく必要がある。
昨今当方の東南アジアの市場に対する見方に関しては悲観的なものがある。かつて、BRICSともてはやされた国々で現在、経済成長を達成した国は中国だけである。
東南アジアの中では、自動車産業のサプライチェーンを確立したタイ、中国を追って世界の工場となろうとしているベトナム、世界第4位の人口を持つインドネシアには期待したいが、どの国も1ヵ国の市場規模では、中国にはおよばない。
人口という観点からすれば、インドにも期待はもてるが、当方の担当ではない。次回から各国別の記事にはいりたい。

2000年代より、中国・タイ・インドネシアに駐在。コロナの影響でベトナムには駐在できずにいるが、日々、現地の代理店と情報交換の上、ビジネスをすすめている。
アスプローバ株式会社 営業顧問

「アジア進出を成功に導く レクチャー25講」
株式会社青月社刊