アスプローバ営業体験記 第三回【「アジア進出を成功に導く25講」著者 藤井賢一郎が斬るアジアビジネス】

東南アジアビジネスですぐに直面するのが製品価格の問題だ。ソフトウェアの価格は、その国の人件費に比例する。

東南アジアは国により人件費が異なるために、ロングテールな製品価格体系が不可欠となる。日本の製品価格を前提とする場合、低価格商品は、取扱データ量をへらすか、製品機能を減らす。生産スケジューラの導入経験のない国々には、ピッタリの施策だ。

当方は当社製品価格帯に各国の市場が追い付く目安は、国民一人当たりのGDPが5000ドルを超えた時点からと考えている。また、それに経済の成長率を勘案すると、ASEAN5と呼ばれるマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムが当社のターゲットとなるが、フィリピンは自国の産業からというよりは海外への出稼ぎの結果に追うところが大きい。別の理由で、シンガポールも製造業の規模は小さい。

最後の楽園といわれたミャンマーが軍事クーデターで将来性がなくなった。よって当社のターゲット市場は、東南アジアではベトナムが最後だ。その他の国々も「中進国の罠」から抜け出すことはできない。

ひろくアジア市場と考えると、中国に続くのはインドであるが、当方は最近関わりはじめたばかりの市場なので多くの知見を持ち合わせていない。単純にマーケットサイズからすれば中国同様に直轄支店が必要だ。

日系製造業の観点からすれば、世界で勝負できているのは、「トヨタ」1社のみだが、その優位性は電気自動車の世界で崩れる。

当社も「日本のアスプローバ」から「世界のアスプローバ」にならなければ生き残りはない。その際に必要とされるのは言語能力と文化理解能力だ。その二点を有する人材であれば、日本人である必要はない。外国語対応が将来AIによって代替えされるにしても、その国の国民性や市場性を判断する力は人間にのみ帰属する。

東南アジアの人々に共通するのは日本人のような時間に対する厳格性がない点だ。ビジネスにおいては、その「ゆるさ」をある程度看過する心構えとそれでも最後には目的を達成するするための戦略が重要だ。また、どの国の人も中国人同様にプライドが高いため、日本人は常に、「その国で仕事をさせて頂いている」との態度が必要だ。

製品価格の問題に戻す。当社のヨーロッパ支店は、日本本社より高い価格体系だ。日本と欧米の価格差、利益率の違いはハードウェア製品にも見られる。グローバル企業が当社製品を世界展開する場合は、基本的に顧客本社一括購入のグローバル価格設定が求められる。当社の場合、国境をまたがる同時購入は認めていない。安い中国価格をヨーロッパ工場に適用されたのでは、導入費用(この場合、その国の代理店の人件費)とバランスが、取れない。

元来、製品価格は顧客がその商品を利用した際に得られる利益に見合うものでなければならないが、ソフトウェアの場合、その算定は製品利用後でないとできない。

藤井賢一郎 fujii@asprova.com
2000年代より、中国・タイ・インドネシアに駐在。コロナの影響でベトナムには駐在できずにいるが、日々、現地の代理店と情報交換の上、ビジネスをすすめている。
アスプローバ株式会社 営業顧問著書
「アジア進出を成功に導く レクチャー25講」
株式会社青月社刊

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