アスプローバ営業体験記 第二回【「アジア進出を成功に導く25講」著者 藤井賢一郎が斬るアジアビジネス】

私の新規の市場開拓の手順を述べたい。

まず第一に日本で当社システムを利用している現地工場を訪問する。日本の工場でうまく利用されているかに影響されるが、導入検討をする顧客は最後に日本に照会をかけるので、事前に現地顧客にもアナウンスしていた方がよい。

現地に日本工場で過去、当社製品の導入にかかわった人間がいると好都合ではあるがめったにない。現地工場に導入されるとケーススタディにできるので、有力な営業ツールとなる。東南アジアでは特にローカル企業において同業他社への導入事例の公開を営業段階で必ず求められるからだ。

第一ステップをひととおり終えると次にその他日系製造業の顧客を訪問することになる。
この時も第一ステップで作ったケーススタディが役に立つ。誰もその国のファーストユーザにはなりたがらないからだ。第三ステップは、地元の製造業の工場がターゲットとなる。

最終的にはローカル企業市場にまでビジネスを拡大できなければ、その国での事業継続は難しい。各段階を1年ずつかけて、計3年現地駐在での本腰をいれた活動が不可欠だ。なぜなら、第一回で述べたように現地代理店の開拓と育成もこの期間に同時に行わなければならないからだ。

現状では、中国市場は現地顧客率が90%、タイでは、30%程度、ベトナム・インドネシアが10%程度だ。当社製品価格が日本と同様であり、中国を除くアジア各国の現地企業にとって割高であることに加えて、工場のシステム化の程度も影響している。

一般に工場では、財務会計システムが最初に導入され、続いて生産管理システムが、最後に生産スケジューラが導入されるという順番だ。東南アジアの工場では、理論在庫や製造実績が正確にとらえられないことがおおく、生産スケジューラに行き着くまでには時間がかかる。一度Excel文化が現地スタッフに定着してしまうと、トータルシステムの導入には抵抗が大きい。

製品の現地言語対応に関しては、ERPシステムのように、その使用者が管理職レベルの場合は英語で事足りるが、生産スケジューラのように現場スタッフである場合は、ローカル言語化がかかせない。システム導入後の保守メンテを含めて現地語で対応できるその国での代理店が必要なのもそのためだ。

東南アジアでは、労働の流動性が高く、顧客の担当者のみならず、導入代理店のSEも1~2年以内に転職してしまう。システム導入よりもその維持管理がより困難であるのもこのためだ。

東南アジアのシステム導入で唯一のアドバンテージは、過去にしがらみがないというところか?日本の工場のようにシステムの独自性を企業の優位性とした時代が無いために、細部にこだわらない傾向がある。

憂慮すべきは、それ故に、最新のシステム技術を追いがちな点やシステムを導入すればなんでもできると考えがちな点だ。理想と現実の間での落としどころをみつけられないとプロジェクトは失敗する。

藤井賢一郎 fujii@asprova.com
2000年代より、中国・タイ・インドネシアに駐在。コロナの影響でベトナムには駐在できずにいるが、日々、現地の代理店と情報交換の上、ビジネスをすすめている。
アスプローバ株式会社 営業顧問著書
「アジア進出を成功に導く レクチャー25講」
株式会社青月社刊

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