インドネシアでの製造業における生産オペレーションの現状と今後【第1回:在庫管理】

アジサイBLOG

今月5月13日からは、イスラム教の断食月(ラマダン)終了後のレバラン休みが始まりました。 毎年、この時期には、日本のお盆、正月と同じように、ジャカルタ近郊で働くインドネシア人の方々は、地方の故郷の実家に帰省するため、列車、クルマでの大移動が見られます。 ですが、今年は、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大を押さえる為、インドネシア政府が帰省禁止の政策を打ち出し、ジャカルタから外に出る道路などの検問を強化しました。例年とは異なり、インドネシア人の皆さんは実家でなく、ジャカルタの自宅で過ごすレバラン休暇を迎えており、コロナに対する我慢は、ここでも強いられています。

とは言え、帰省禁止期間は5月6日~17日となっており、地方に帰省するためにそれ以外の期間で会社の休みを取る人も多く、分散しつつも移動は発生しているようです。

自動車系OEMやサプライヤの会社では、5月8日~18日まで11日連休という会社もありますが、コロナ禍では、日本、インドネシアそれぞれでの入国時の隔離期間もあるため日本に帰国できず、つかの間のリフレッシュをジャカルタで過ごされている日本人駐在員も多いです。

ラマダン、レバランの時期が終わると、インドネシアの方々も本腰を入れて業務に取り組む傾向が強く、ここから年度末の12月末に向けて、製造業の会社でも生産、間接業務の定常業務に加え、業務改善への取り組みも加速する時期になります。

今回から数回に分けて、インドネシアでの製造業企業の業務ごと(生産、在庫、調達など)に、今はどのような業務形態が多いのか、これまでに会話させていただいた企業の方々のお話も参考にしつつ、ご紹介していきます。
第1回の今回は、在庫管理領域にインドネシアでの製造業の現状をお伝えします。

インドネシアでも、製造業の会社では完成品在庫の倉庫や材料、および中間品の配置スペースについては各工場にて規模は異なるものの常設しています。 完成品倉庫の規模については会社によりさまざまですが、規模の大きい会社であれば、倉庫要員として100名から200名を配置しているところもあります。
上記は例外としても、中小規模の会社では、完成品/中間品/材料の在庫や、加工業者に送付する分の中間在庫などのスペースを確保しているケースが多いです。

日本では、中小企業含め、バーコードなどで在庫の入出庫やロケーションを管理して、常に最新の在庫を把握し引当、出荷とつなげていく在庫管理が定着していますが、インドネシアでは、まだまだその段階には到達していない印象です。
在庫は、どの会社でも月次での棚卸はしています。しかしながら、その棚卸の総数も正確ではないケースも多く、出荷量(売上)、生産量、在庫量の整合性が厳密には取れていないケースも見られます。 これは、何社かの経営者に伺った中で皆さん、現場メンバーが棚卸の重要性を理解していない、かつどの頻度、粒度での棚卸をすると、どのような経営管理に使えるかを把握していないといったことを理由に挙げられていました。
在庫棚卸の結果は、資産の月次報告に利用されるために主に経理部門担当が使用しますが、棚卸実施要員は経理部門とは別のメンバーが担当します。 その役割分担の中、利用目的を理解していないことで、在庫数の正確性を保てない状況が起きます。 また、別の問題として、地域によっては在庫を個人的に持ち出す事件もいまだに起きているようで、日本では考えられないケースまで想定して、在庫管理を行う必要があります。

筆者もこれまでさまざまな企業に対し、原価管理の精度向上を目指した改善提案を進めたことがありますが、日系やインドネシア系関わらず、500名以下の中小規模企業については、原価管理以前に、まず足元の在庫棚卸をどう精緻に把握するかを現場メンバーに教えこみ、それを定常業務として回してもらうことから始める必要があるところがほとんどです。
もちろんこのような段階ではなく、在庫管理もバーコードやRFIDなどを導入して日本と同様に管理している企業もありますが、2000名以上の工場を有するごく一部の大手企業のみという状況です。 日系企業では日本本社の方針に従い、IoTなどの導入も検討し始めているところもありますが、バーコード以上の技術(RFID、センサ、スマートグラス等)を導入して在庫管理するだけのメリットに対して、投資規模が合わないと考える会社も多く、先進的な在庫管理や、それと連動するWMS(倉庫管理)を導入している企業もまだ少ない印象です。

タイやベトナムの弊社のコンサルタントに聞いても、中小企業については、在庫管理や原価管理の取り組みに対しては同じような関心度であり、現時点では取り組みの優先度は低いようです。

会社の規模に関わらず、コスト構造として、変動費(直接材+光熱費)と固定費の比率は60:40くらいといった固定費率が高い業界会社においては、在庫管理の精度を上げ、原価低減を図ると効果が上がるため、中期的に取り組んでいく必要があります。微妙な稼働率の変化によって総原価も変わりますし、固定費の発生や在庫の評価額によって売上原価が変動していきます。 日本人経営者はその必要性は理解していますが、インドネシア人従業員にその意味を理解させ、現場での定常業務に取り入れる難しさを身に染みて体験しています。「オーダーに合わせた調達・生産・出荷をこなす」以上のことに取り組む余裕ができるのは、コロナ禍で定常の事業運営ができるようになるのが来年2022年ころと想定されることから、まだまだ2~4年先の検討課題になるとは思われます。
我々コンサルタントもWMSや在庫管理のツールを入れる先進的な業務自動化の支援というよりは、現場メンバーの意識改善や、在庫管理をマニュアルでまずどう把握していくのか、などを支援するケースが続くと想定していますが、このような地道な取り組みを一歩一歩着実に進めることで、収益向上、生産性向上につながるものと考えています。

著者
河野 茂樹
NTTデータグループのコンサルティング子会社 株式会社(株)クニエのインドネシア活動拠点にて勤務。
25年近く製造業、主に自動車業界での開発、生産・物流、販売/サービス 領域での業務改革コンサルティング案件に従事。2018年よりジャカルタに駐在し、現地の製造業、小売業のお客様の業務オペレーション改善を支援中。

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