このコラムでは、筆者がコンサルティング会社の駐在員として3年弱ジャカルタに駐在し、ジャカルタ近辺の日系およびインドネシア系の製造業のお客様との会話を続ける中で見えてきた、アセアン、特にインドネシアにおける製造業の現状と今後について、製造業の各業務領域にフォーカスをあて、筆者なりの所感を連載で紹介していきます。参考にしていただければと思います
昨年のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大の影響を受け、インドネシアでも2021年3月末現在で、トータル約149万人の感染者が出ています
現時点でも、1日あたりの感染者数は、4,000~6,000名近くとなっており、今年に入ってからも製造業の企業や日本人駐在員の中でも感染が広がっています。
筆者のお客様の中でも、クラスターの発生という事態がたびたび起きながらも、何とか工場を止めずに回し続けているといった状態です。
ジャカルタ近辺の各日系の企業では、150名~600名規模の工場を運営しているところが多く、日本人駐在員も社長と他に製造、および経理を担当する2~3名という体制で、後のメンバーは全て現地の方々という会社が多い状況です。 オーダー受け付け、生産計画、現場管理、在庫管理、品質管理なども現地従業員主導で運営するレベルまで各社進んできていますし、現地従業員も、会社にコミットして責任感を持って業務遂行してくれる一部のキーメンバーも居れば、指示待ち型でいかに(自分にとって)効率的に作業を進めるかだけを考えるメンバーも居ます。
ジャカルタ近辺の工業地帯では、スキルの高い、あるいは意欲の高い人材を採用することは難しくなってきており、現地の優秀な人材は日系、またはインドネシア系の大手の会社に流れていきます。 この状況下において、中程度の意欲を持つ従業員を上手く活用しつつ、どのように効率的に製造を回し、会社の売り上げ、収益を維持するか、どの中規模の製造業企業でもTOPは日々、苦労されています。
コロナ禍の状況を受け、現在、インドネシア政府は就労ビザ(KITAS)を持つ外国人以外の、インドネシアへの入国を認めていません。 また昨年12月からは、新規の就労ビザの交付を停止しており、駐在員の交代や日本からの工場の支援要員の渡航が滞るケースが増えています。ある製造業企業では、工場の新製品立ち上げのための製造準備作業において、日本からの要員支援の訪問を実現できず、現地要員のみで製造準備作業を実施し、数カ月にわたり、製造トラブルが収束しないというケースも出てきています。
このように現地に進出している企業の実態をお伝えしながら、コロナ禍の影響を受けつつも、2021年度、2022年度でのAfter コロナに備え、今でできること、やるべきことの所感を、今後数回に分けて紹介していきたいと思います
次回は、まず在庫の管理の観点から、現状、どのような状況かをお伝えしていきます。
河野 茂樹

25年近く製造業、主に自動車業界での開発、生産・物流、販売/サービス領域での業務改革コンサルティング案件に従事。2018年よりジャカルタに駐在し、現地の製造業、小売業のお客様の業務オペレーション改善を支援中。