20年前にAsprovaの紹介のために地方の工場に出張
私は仕事柄20年以上、何百社もの工場を訪問していますが、その中で後にも先にも「こんなことを言われたの初めてだ」というエピソードがあります。
20年ほど前に、ある工場から当社でコンタクトがあり、Asprovaを紹介に来てほしいということで、我々は大事なビジネスの機会と捉えて代理店さんと一緒に訪問しました。
工場での説明の中でお客様から要件を伺い、それをAsprovaで実現可能なことをご覧に入れました。
通常我々は提案書を練るというよりも、3000以上の機能があるAsprovaという製品の機能を生かして、お客さんの要望に合わせてテーブルやパラメーターの設定で、プログラム開発なしで導入できることが大きな特徴です。
ですから説明に伺って、その場のデモで勝負!という感じの商売をしておりました。
その時も現地でデモを見ていただき、お客様からは「思ったとおりいいもんですね」というありがたいお言葉をいただき、計画担当者が困っていることが解決できそうですとまで言っていただきました。
しかし私が発した「計画担当の方が現在どれくらい時間をかけて計画を立案されてますか」という質問に対して「主に4時間くらいです」という回答が返ってきた瞬間、私の頭にある直感が走りました。
なぜかといえば、Asprovaを購入するお客さんは計画担当者が最低に3人は居て、毎日8時間以上の時間をかけて計画を作成しているという企業が多く、計画作成という作業はそれだけ大変で難しく手間がかかるということです。
Asprovaは計画担当者が多い工場ほど導入率が高くなります。何故ならAsprovaでそういう多数の計画担当者を1人でできるようにすることができるからです。
中国ではAsprovaを導入することで、何十人という計画担当者を1人にまで削減し、バックアップのためのサブ要員を付けるという構成に落ち着くことが多いのです。
しかしこの工場のように最初から担当者が一人では減らしようがありません。しかもパートタイムの方が週4時間の作業で済んでいるわけですから、パートの方の時給等を考えても、導入費用回収に10年はかかかるんのではないかと。
もう価格の話になったらそこで終わりだと覚悟を決めました。
お客様から返ってきた驚きの一言
話の流れとしてお客さんから「いくらするんですか」という話になり、代理店さんがライセンスが何で、導入支援がだいたいこれくらいかかりますという説明をしました。
予想どおりその場に沈黙の時間が流れました。
確かにAsprovaは大変安いと言われることはめったにありませんし、そもそも今でもパートの方が一人で十分回せている状況です。
ほぼ諦めていた僕も場の沈黙に耐え切れず「やはりちょっと高いですかね」と切り出したところ驚きの一言が返ってきました
もう本当にびっくりしました。こんな話はあれから20年近く経ちますが二度と聞いたことはありません。本当に驚きました。
この工場こそが富士フィルムさんなんです。
当時はまだ写真フィルムビジネス関連は健在で、コダックと世界一を争っていらっしゃったと思います。それからは良く知られているようにデジタル化が進み、マーケットは10分の1以下になってしまい、世界一だったコダックは一度破産して再出発しました。
一方で富士フィルムは破産どころか奇跡とも言われる革新を続けて生き残り、医療機器や化粧品等の市場で成功して、売り上げを大きく伸ばし続けていらっしゃいます。
その核心については、たくさんの記事が本にもなったり、また海外でも紹介されています。
私がをお伝えできることは小さなことですけれども、当時工場の中に喫茶店のようなところがありまして、お茶もごちそうになりました。
社員食堂はどこでもあって普通なんですが、結構小奇麗な喫茶店があって、従業員が自由に使えるような工場はあまり他になかったように記憶しています。
それも含めてやっぱり富士フィルムというのは従業員を本当に大切にしていると、そして仕事の本質を考えていると思いました。
だからこそコダック様と違って富士フィルムさんは成長し続けているのではないかと思いました。