インドネシアのB2Bビジネスが難しい理由【Asprovaインドネシア代理店 PT.バテラ】

中国やタイでの成功パターンがインドネシア市場で通用しない?

弊社はインドネシアで生産スケジューラAsprovaの代理店をしておりますが、日本で58.4%のシェアを誇るAsprovaは、過去の実績から見て1人当たりGDPが5,000ドルを超えた国で、売れはじめるという法則があるそうです。

アジアで日系製造業が比較的多く進出している国々の2019年の一人当たりGDPは、マレーシアが11,414ドル、中国が10,261ドル、タイが7,806、インドネシアが4,135ドル、ベトナムが2,715ドルとなっており、上記法則に基けばマレーシア、中国、タイはある程度の売上が見込まれる市場と言えるわけです。

これまで中国とタイで順調に売上を伸ばし、次のターゲットとして2億7千3百万人という世界第4位の人口を持ち、1人当たりGDPが4,000ドル超えを達成し、5年以内に5,000ドルを越えると言われるインドネシアをと考えるのは自然の成り行きです。

中国の日系企業数は13,646社(2020年)うち製造業が5,559社と業種別で1位、タイの日系企業数は5,856社(2021年)うち製造業が2,334社と業種別で1位、これら二国に比べると大分見劣りするとはいえ、インドネシアの日系企業数は1,489社(2020年)うち製造業が871社あり、2030年まで人口ボーナス(15~64歳の生産年齢人口が、0~14歳と65歳以上の従属人口の2倍以上ある状態)が続くと言われる巨大市場は大きな魅力です。

ちなみにマレーシアの日系企業数は1,385社(2018年)うち製造業は691社と一人当たりGDPが高いとはいえ、人件費その他コストの問題、国内市場の規模、地政学的問題等で、日系製造業の東南アジア拠点としては、あまり適していないと判断されてきたものと考えられます。

これまでコールセンターからのテレアポにもとづいて、毎日のようにLRT工事や高速道路高架化工事の渋滞の中、片道数時間かけて、ジャカルタの東に連なるチビトゥン、チカラン、カラワン、チカンペックなどの工業団地の日系企業を訪問しました。

しかしながら中国やタイでAsprovaが熱い!という噂とは裏腹に、どうもインドネシアでは雲をつかむような感じで、打てば響くような反応がなかなか得られませんでした。

インドネシアのB2B市場が難しい理由

日本はもちろん中国やタイでのAsprovaの評判は十分に高い、しかもインドネシア市場においてAsprovaには競合製品が皆無である、それにもかかわらず日系企業からの反応が芳しくない理由として以下の3つが考えられました。

  1. 中国やタイの売り方がインドネシアでは通用しない。
  2. 製品の機能や価格帯がインドネシア市場に合っていない。
  3. そもそもソリューション自体がインドネシア市場で必要とされていない。

あらためてインドネシア市場の中における自社が、顧客と競合とどのように関係し合いながら存在しているかをリスト化してみると、赤文字部分がそれぞれの立場の中でマイナスに働く要素となっており、中でもこのAsprovaに対して影響が大きいのは価格の問題であると推測されます。

つまり在インドネシア日系製造業の間で、このAsprovaのソリューション自体に大きな予算を組むほどの価値が認知されていないというのが売るのが容易ではない理由の一つであるという推論が立てられます。

また成功例である中国とタイに比べてインドネシアの弱い部分は、日系企業の数が少なく現法決裁権も小さい点であることが明らかですが、これら2つの問題はAsprovaに限らず、日本のサービスプロバイダーがインドネシアでサービス展開する上で直面する、共通の問題と言えるのではないでしょうか?

インドネシアはB2Bが本当に難しい国だと思うのは、日系企業進出数も1500社くらいとそこそこあるとはいえ、市場としては微妙な規模、中華系は日系以上に結束が固く、有望とされるローカル市場の開拓には時間と金が掛かる。5年後に有望な市場になると言われ続けてもう10年以上経つわけです。

インドネシアは若年層が爆増してだけあってB2Cは好調で、巨大な内需、豊富な人材、緩やかな経済成長、数字があまりにキラキラしているだけに、ここ10年でいろんなサービス業が進出しては来たものの苦戦もしくは撤退、特にITに関してはこの傾向を強く感じます。

ところで中国やタイに比べて予算が少ない、決済権が小さい、日系企業の数が少ないという話は、今になって出てきたものではなく、10年以上前から言われてきた問題がそのまま変わらず存在しているというだけの話であり、問題解決のための具体的な戦略と施策に目新しいものはなく、今後もインドネシアでのB2Bビジネスは難しい状況が続くのではないかと考えています。

ローカル企業を相手としたB2Bビジネスは、短期間で確立することは難しいため、まずは日系企業をターゲットとしたサービス展開を検討するのは仕方のないところですが、将来日系企業のIT投資条件が改善されたことによりAsprovaが売れ始めるようになると、必然的にベンチマークした競合製品が参入してくることが予測されます。

B2Bマーケティングの難しさ

営業活動を売上という明確な目標を掲げた対顧客の一連の活動と定義するならば、マーケティングは市場への新規参入時の競合企業のベンチマーク調査や業務提携パートナーを探す際の信用調査、その市場自体の全体像を把握するための市場調査など、対市場(マーケット)の一連の活動であると定義されます。

マーケティング活動では、市場に間接的に影響を及ぼす外的要因や、市場における自社の立ち位置を分析する必要があるわけですが、インドネシア市場の場合にも独特の行政ルールと商慣行、多宗教や多民族間での行動様式・思考様式の相違に関する理解が必要となります。

競合と比較したり時間軸の中での変化を見たり年齢層とか地域とかセグメントを見たりしても、これだけ理解できない事象が次から次に出てくるのは、そもそも国民性とか宗教とか商慣習についての理解が根本的に足りてないからじゃないか、というのは薄々感じていたことでした。

歴史的に見て日系製造業の東南アジアにおける生産拠点、販売拠点としてタイが選ばれてきた理由は、国内市場のみならず陸続きのベトナム、カンボジア、マレーシア、シンガポールなどのインドシナ半島全体を市場と見なすことができたからでした。

そして中国を中心に海外展開していた製造業の間で、2010年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件、2012年以降の大規模反日デモ、近年の米中貿易摩擦に伴うアメリカの中国産製品に対する関税引き上げなど、一連のチャイナリスクによって脱中国化の動きが出ていますが、その受け皿となるべく海外投資誘致に積極的なインドネシアの一番のライバルはベトナムです。

Asprovaは中国とタイで売れてインドネシアとマレーシアで苦戦している状況ですが、この違いは宗教に起因するんじゃないかと言われたことがあるのですが、ITサービスでそんなことないだろうと思っていたが、あながち無関係でもないのかもしれません。

イスラム教がインドネシアにおける製造業ソリューション製品のマーケティング活動にどのように影響しているかは想像しにくいのですが、それくらいインドネシアB2B市場は伏魔殿のような存在なのかもしれません。

*この記事は「バテラのインドネシアのブログ」から転載、加筆したものです。

こんにちは、PT.バテラの山本です。
弊社はジャカルタの東15kmに位置する西ブカシにあるITサービス会社で、生産管理システム、在庫管理システム、販購買システムなど、主にチビトゥンやチカラン、カラワン、タンゲラン方面の製造業様向けに、システムの開発導入を行っています。
インドネシアでのITシステム導入、その他幅広くご相談承っておりますのでお気軽にご連絡ください。
メール:yama@bahtera.jp
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